スマート農業日誌
題名: 土壌pHの話し
土壌酸性
土壌の酸性を表すのに、pHと酸度があり、pHは土壌酸性の強さを表し、酸度は土壌を酸性にする物質の全量を表す。pHは土壌の酸性の程度を、酸度は酸性矯正のための中和石灰量を知ることが目的です。
pH
pH7が中性であり、それより小さい値は酸性を、大きな値はアルカリ性を示している。pHは土壌の化学性を特徴づける基本的な項目で、pHの違いにより土壌微生物の活動、土壌構成物質の形態変化、養分の有効性などが微妙に変化します。
pH(H2O)による土壌酸性の程度の区分
pH(H20) | 区分 |
---|---|
>8.0 | 強アルカリ性 |
7.6-7.9 | 弱アルカリ性 |
7.3-7.5 | 微アルカリ性 |
6.6-7.2 | 中性 |
6.0-6.5 | 微酸性 |
5.5-5.9 | 弱酸性 |
5.0-5.4 | 明酸性 |
4.5-4.9 | 強酸性 |
極強酸性 |
土壌pH改良の目的
作物の生育と最適なpH
多くの作物はpH6.0~6.5の微酸性領域で生育がよいが、作物ごとに好適なpHは異なる。大部分の畑作物はpH6.0~6.5の微酸性領域で生育がよいが、なかにはほうれんそうやブドウのように微酸性~中性領域を好む作物もあります。
酸性が強い土壌の影響
酸性が強い土壌では、野菜の根が傷む、根がリン酸を吸収しにくくなるなど、野菜にとっては良い条件ではありません。
アルカリ性が強い土壌の影響
マグネシウムや鉄などのミネラルの吸収が妨げられ、野菜の育ちが悪くなります。また、病気もでやすくなります。
土壌が酸性になる理由
日本の土壌(黒ボク土などの火山灰土壌)は一般的に酸性寄りです。もともとの性質もありますが、次のようなものも大きな理由です。
・雨が多いため、土中のアルカリ分(石灰分)が流される
・雨そのものが酸性になっている
・化成肥料を入れる(多くが酸性肥料なので)
酸性土壌をアルカリ性にする
酸性土壌をアルカリ性にするには、カキ殻や貝化石などが原料の「有機石灰」や「草木灰」などのアルカリ性資材を土に入れます。尚、石灰を撒くことで一時的に中和されますが、雨などによりまた酸性に傾いてくるので、都度pH調整は必要になります。
pHの測り方、原理
pHの測り方:ガラス電極法
pHは土壌溶液中及び土壌の陰電荷に吸着している水素イオン(H+)の濃度を表し、ガラス電極法で計測するのがスタンダードです。 pHガラス電極と比較電極の2本の電極を用い、この2つの電極の間に生じた電圧(電位差)を知ることで、ある溶液のpHを測定する方法。
土壌pHセンサ:半導体式
ガラス電極法において、土壌に長時間設置した状態での測定方法は、電解液の低下やガラス電極の損傷を招き困難でした。
ラピスコンダクタから、土壌センサユニット「MJ1011」で土壌pHを測れるセンサが今年度出荷されjwpでも評価している。
土壌pHセンサを省電力で、LPWA(Sigfox)で広大な露地・水稲・果樹圃場で利用する。
jwpはSigfoxソリューションおよびサービスを持っており、土壌pHセンサのデータをSigfoxで伝送し、プラットフォームで集約するソリューションを今後提供していく。
土壌・環境センシング:Sigfoxネットワーク

土壌・環境センシングネットワーク図

作物の生育に好適な pH範囲
作物 | 適したpH | 作物 | 適したpH | 作物 | 適したpH | 作物 | 適したpH |
---|---|---|---|---|---|---|---|
水稲 | 5.0-6.5 | 大麦 | 6.5-8.0 | 小麦 | 6.0-7.5 | >そば | 6.0-7.5 |
落花生 | 5.3-6.6 | トウモロコシ | 5.5-7.5 | バレイショ | 5.0-6.5 | ダイコン | 6.0-7.5 |
カブ | 5.5-6.5 | 人参 | 5.5-7.0 | 白菜 | 6.0-6.5 | キャベツ | 6.0-7.0 |
ホウレン草 | 6.0-7.5 | タマネギ | 5.5-7.0 | ナス | 6.0-6.5 | トマト | 6.0-7.0 |
キュウリ | 5.5-7.0 | カボチャ | 5.5-6.5 | イチゴ | 5.0-6.5 | スイカ | 5.0-6.5 |
レタス | 6.0-6.5 | カリフラワー | 5.5-7.0 | アスパラガス | 6.0-8.0 | ミカン | 5.0-6.0 |
リンゴ | 5.5-6.5 | ブドウ | 6.5-7.5 | ナシ | 6.0-7.0 | モモ | 5.0-6.0 |
オウトウ | 5.0-6.0 | カキ | 6.0-7.0 | 栗 | 5.0-6.0 | 杏 | 6.0-7.0 |
パイナップル | 5.0-6.0 | ブルーベリー | 4.0-5.0 | 茶 | 4.5-6.5 | シソ | 6.0-6.5 |
バジル | (5.5)6.0-6.5 | 大葉 | 6.0-6.5 | セージ | (5.5)6.0-6.5 | ミント | 5.0-6.0 |
ニラ | 6.0-6.5 | ネギ | 5.7-7.4 | サツマイモ | 5.0-6.0 | ニンニク | 5.0-6.0 |
EC値における基肥施用判断
EC値(mS/cm) | 基肥施用判断 |
---|---|
0.3以下 | 普通量 |
0.3~0.5 | 普通量~普通量の2/3 |
0.5~1.0 | 普通量の1/3~普通量の1/2 |
1.0~1.5 | 普通量1/3以下 |
1.5~2.0 | 無施用 |
2.0以上 | 除塩必要 |
pH,EC値における簡易診断

タイプ | pH | EC(ms/cm) | 主な症状 | 対処方法 |
---|---|---|---|---|
高pH 高EC | 7.0以上 | 1.5以上 | ①窒素、塩基成分がいずれも過剰に蓄積している可能性がある。 ②葉は濃緑色、草丈が伸びず、花落ち、着果不良などの症状が植物に現れることがある。 | 無肥料栽培など施肥量を大幅に削減した施肥を行う。 |
高pH 低EC | 7.0以上 | 0.5以下 | ①塩基成分が多いものの、窒素成分が少ない圃場である。 ②地上部生育は悪く、微量要素欠乏症などが 発現している場合がある | 窒素肥料を基準量施用する。栽培途中であれば、追肥する。 |
低pH 高EC | 5.5以下 | 1.5以上 | ①石灰などの塩基成分の不足ではなく、硝酸や硫酸などの陰イオンの蓄積よる pH 低下の可能性がある。 ②作物の生育は地上、地下部とも悪い。 | 窒素肥料の施肥を避ける。 |
低pH 低EC | 5.5以下 | 0.5以下 | ①窒素、塩基成分がいずれも不足している可能性がある。 ②作物の葉色は淡く、生育は悪い。 | 石灰質肥料を施用して、pHを上げ、窒素は基準量を施用する。 |
適正 | 5.5~7.0 | 0.5~1.0 | ― | ― |
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新農林社様 農機新聞 2018年6月19日付紙面
平成30年11月15日 株式会社 ジョイ・ワールド・パシフィック ITビジネス課
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